死亡による逸失利益には、稼働部分と年金部分とがあります。
稼働部分とは、働いて得る収入の部分のことです。
年金部分の逸失利益の計算式は、次のとおりです。
年金額×(1-生活費控除率)×平均余命年数に対応するライプニッツ係数
生活費控除率とは、労働災害(労災)の被害に遭って死亡したことで、将来得られるはずであった収入が失われる一方で、将来の生活費の支出がなくなることを考慮して、損害額の算定の際に一定割合を生活費分として控除するものです。
年金部分の生活費控除率は、稼働部分の生活費控除率よりも高くされる例が多いです。
経験上は、60%~70%とされるのが一般的です。
平均余命年数とは、労働災害の発生時の年齢における、統計上の平均余命の年数です。
そして、ライプニッツ経数とは、平均余命年数に対して3%(民法で定められた法定の利率)の中間利息を控除した数値のことです。
逸失利益の賠償では、将来の損失をまとめて一括前倒しで受け取るために、このようなライプニッツ係数による調整を行うのです。
【計算例】
年金を受給しながら稼働する70歳の男性が労働災害の被害に遭って死亡し、年金額が100万円というケースで、年金部分の逸失利益を計算してみます。
ここでは、生活費控除率を60%と設定するものとします。
70歳の男性の平均余命年数は2017年の統計で16年(その年によって変動があります)、ライプニッツ係数は12.5611です。
この方のケースで年金部分の逸失利益を計算すると、次のとおり、502万4440円となります。
100万円×(1-0.6)×12.5611=502万4440円