死亡による逸失利益には、稼働部分と年金部分とがあります。
稼働部分とは、働いて得る収入の部分のことです。
稼働部分の逸失利益の計算式は、次のとおりです。
基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
基礎収入とは、逸失利益を算定する基礎となる年収のことです。
労働災害(労災)の発生時における収入をベースに考えるのが原則となります。
しかし、若年者の場合には、将来の増収の見込みを考慮して全国平均賃金を参照することが多いです。
生活費控除率とは、労働災害の被害に遭って死亡したことで、将来得られるはずであった収入が失われる一方で、将来の生活費の支出がなくなることを考慮して、損害額の算定の際に一定割合を生活費分として控除するものです。
生活費控除率は、労働災害の被害者が一家の支柱であるか、被扶養者は何人であるか、一家の支柱でなければ男性であるか女性であるかなどによって、標準の数値があります。
就労可能年数とは、労働災害の被害に遭って死亡することがなければ、その後も働けたであろう年数です。
そして、ライプニッツ係数とは、労働能力喪失期間の年数に対して3%(民法で定められた法定の利率)の中間利息を控除した数値のことです。
逸失利益の賠償では、将来の減収をまとめて一括前倒しで受け取るために、このようなライプニッツ係数による調整を行うのです。
【計算例】
労働災害の発生時の年収が400万円、年齢が47歳の一家の大黒柱であり、被扶養者が2人いて、今後20年間の就労が見込まれるところ、労働災害の被害に遭って死亡してしまったというケースで、稼働部分の逸失利益を計算してみます。
一家の大黒柱で被扶養者が2人以上の場合の生活費控除率は、30%が標準の数値です。
就労可能年数が20年間であるとして、20年に対応するライプニッツ係数は、14.8775です。
このケースで稼働部分の逸失利益を計算すると、次の計算式のとおり、4165万7000円となります。
400万円×(1-0.3)×14.8775=4165万7000円