元請業者に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
現場での仕事について、元請・下請が何重にも存在していることが少なくありません。
そして、機械・資材の準備、工期・安全の管理、下請業者の労働者への指揮監督を、元請業者が行っていることがあります。
元請業者と、下請業者の労働者との間には、直接の労働契約が存在しなくても、このように元請業者が現場の安全管理をコントロールしている場合には、特別な社会的接触の関係があるものとして、元請業者は、下請業者の労働者に対し、安全配慮義務を負います。
また、同じ現場で行う事業の仕事の一部を下請業者に請け負わせている事業者のことを、元方事業者と言います(労働安全衛生法15条1項)。
元方事業者は、下請業者および下請業者の労働者が労働安全衛生法および規則等に違反しないように必要な指導をし、違反していると認めるときは是正のための必要な指示をする義務があります(労働安全衛生法29条)。
したがって、元請業者が労働災害防止のための必要な措置を取らなかったり、下請業者の労働安全衛生法および規則等の違反に対し、是正のための必要な指示をしなかったりした場合には、安全配慮義務に違反したものとして、下請業者の労働者に対して損害賠償責任を負うこととなります。
労働災害(労災)の被害に遭った場合、雇用主である下請業者には十分な資力がなく、損害賠償金の支払を受けるのが困難であるというケースもあります。
このようなケースで、元請業者には十分な資力があり、損害賠償金の支払を受けられると見込まれるのであれば、元請業者に対する損害賠償請求を検討することが重要です。
元請業者に対する損害賠償請求については、元請業者と下請業者の労働者との指揮監督関係、元請業者の安全管理上の役割など、複雑な検討と主張・立証が必要となりますので、労働災害に詳しい弁護士にまずはご相談いただくのがよいでしょう。