被害者が既往症などの特殊性を持つ場合に、それが原因で治療期間が長引くとか、後遺障害が残るなど、被害結果が重くなることがあります。
このような被害者の特殊性のことを「素因」と呼びますが、「素因」が損害額を拡大させたことを考慮して、損害賠償金を一定割合減額することを「素因減額」と言います。
ただし、被害者に何らかの特殊性があるからといって、必ず素因減額が行われるというわけではありません。
身体的・体質的素因による素因減額が認められるためには、加害者・会社側において以下の4点を証明しなければなりません。
①被害者の身体的・体質的素因が単なる身体的特徴にとどまらず、「疾患」に該当するものであること。
②労働災害とその疾患がともに原因となって、損害が発生したこと。
③その疾患による損害賠償金の減額をしなければ、公平に反すると言えること。
④減額の率を決定するための考慮要素(疾患の種類・態様・程度、労働災害の態様・程度および傷害の部位・態様・程度と後遺障害との均衡)
また、精神的素因(心因的素因)については、その損害が労働災害のみによって通常発生する程度・範囲を超えるものであって、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要素が寄与している場合には、素因減額が認められます。
素因減額が認められるとしても、減額割合は個々の事案によって1割から9割までケースバイケースです。
減額割合の判断要素は、疾患の種類・態様・程度、労働災害の態様・程度および傷害の部位・態様・程度と後遺障害との均衡などが挙げられます。